最新の研究により、HEV(High Energy Violetlight)は網膜の構成層の境界(特に視細胞層と網膜色素上皮層)において、酸化ストレスを引き起こすことが分かりました。Funkらのグループは、標準化された細胞培養によるラボ実験において、411nmの短波長光に曝した場合には、470nm波長光に曝した場合よりもニューロン網膜細胞が強い酸化ストレスを受け、細胞死(アポトーシス)の兆候が認められることを示しました(図1;Funk2011a)。さらにFunkらのグループは、411nm波長光への暴露により、網膜組織の構造の歪みが引き起こされたことを確認しています。
以上の事例は、動物実験や細胞培養実験から、ヒト網膜内でも起こり得る現象であり、加齢黄斑変性が進行する要因の一つと考えられます(Wuetal. 2006, Jarett and Boulton 2012)。また最新のinvitro研究によると、短波長光の照射により、皮質白内障の原因である活性酸素種の生成、DNA損傷及び水晶体上皮細胞の細胞死が開始することが示されています(Xie et al. 2014)。以上のように、眼組織の障害の引き金となる可能がある400nm-420nmのHEVをブロックすることは非常に重要であるといえます。